今回はここ数年、デザインの世界で存在感が高まっている色「パープル(紫色)」の話です。
当初は一過性のブームに終わるかに見えたこの色ですが、テクノロジーからWebデザインやグラフィックデザイン、ファッションの世界まで幅広い範囲で「定番のトレンドカラー」へと進化を遂げている注目のカラーです。
特に秋から冬へ向かうこの時期、広告制作者としても色彩選びの有力候補になる色です。
なぜ今、パープルが注目を集めているのか?その魅力的なイメージから、具体的なトレンドの推移、そして来年、2026年以降の予測までデザイナー視点で徹底解説してみたいと思います。
パープル(紫色)の持つイメージ。その二つの方向性
パープルがデザインで利用されることが増えている要因としては、この色が持つ特有の心理的な効果があります。
さらに大きく二つの方向性をカバーしていることで、適用される範囲が広いという面もあります。
神秘的、高貴、優雅、和風、癒し、芸術性
先進的、知的、個性的、ハイセンス、ハイテク感
特にインターネット界隈のデザインや工業デザインでは、「高貴」と「テクノロジー」という異なる要素を融合させる効果があるために、「洗練された先進性」を表現できる点がデザイン制作者にとっても大きな魅力となっているようです。
デザインのカテゴリー別トレンド分析
この「パープルカラー(紫色)」の流行は、分野ごとに異なる傾向が見られます。
例えば…
特に注目のトレンドカラー。生成AIやSaaSなどのテック系企業が濃い紫や青〜ピンクのグラデーションを用いて「先進的」「未来的」なイメージを表現しています。
モダンなビジュアル表現に採用される傾向。ポスターやパッケージなどにも使われて、クリエイティブで神秘的な雰囲気を醸し出します。また、抽象的な表現、デジタルアートとの相性は抜群。
スマートフォンやタブレット、ゲーミングPCなどのデジタル製品において、個性的かつ未来的、洗練されたカラーオプションとして根強い人気を確立しています。
グラフィックデザインとWebデザインへの波及効果
グラフィックデザインの活用例
ブランドロゴ・パッケージデザイン
高貴さや神秘性を表現したい美容ブランド、ラグジュアリー製品、または精神的な豊かさをテーマにした商品などに、パープルは非常に効果的です。深みのある紫は信頼感と高級感を、淡い紫は優しさや清潔感を演出できます。
広告・DTPデザイン
癒しやリラックスをテーマにした広告(例:アロマ、スパ、ヨガなど)や、女性向けのパンフレットなどで、パープルをメインカラーやアクセントカラーとして使用することで、ターゲット層に響くデザインが可能です。
Webデザインの活用例
UI/UXデザインに
ユーザーに落ち着きや洗練された印象を与えたいWebサイトやアプリのUIに、パープル系の色を取り入れることで、ブランドイメージを高めることができます。特に、高級感を演出したいサイトや、美容・健康、教育関連のWebサイトなどでは、メインカラーやアクセントカラーとして活用すると効果的。
イラスト・アイコンに
Webサイト内のイラストやアイコンにパープルをアクセントとして加えることで、全体に統一感と個性を与えることができます。単調になりがちなデザインに、視覚的な楽しさや洗練さをプラスする効果も期待できます。
インタラクションデザインに
ボタンのホバー(オンマウス)時のエフェクトやクリック時のアニメーションにパープルを使用することで、ユーザーに心地よい体験を提供し、サイトの魅力を向上させることができます。
2025年末〜2026年のトレンド推移を予測すると?
「パープルカラー(紫色)」は一過性の流行というよりも、デザインの定番・スタンダードな選択肢として進化を続けています。
① 流行の始まりとピーク
始まり(2018年頃〜): パントンが「ウルトラ・バイオレット」を選出したり、テクノロジー系スタートアップ企業が先進性を表現するために紫を使い始めたりしたことがきっかけで、一気にデザイン業界に浸透しました。
ピーク(2020年〜2023年頃): AI、メタバースなどの未来志向のテーマが盛り上がった時期と重なり、「テクノロジーの色」としての地位が確立しました。
② 現在の状況(安定と成熟)
現在は、強くて派手目の色調が主流だったピーク期を過ぎ、安定期に入っています。
デジタル系デザイン(Web/グラフィックデザイン)では「未来感」よりも「洗練」「高級感」「知的」を表現する、落ち着いたトーンが好まれています。
一方、ファッション系では「くすみカラー」が引き続き流行色で、落ち着きのある「くすみパープル」も「大人のトレンド」として定着し、日常のコーディネートに溶け込んでいます。
③ 2026年以降の予測
パープルカラーは今後、ニュートラルカラーに近い位置づけでデザインシーンに残り続けると予測されますが、その方向性は2極化していくことが予想されます。
ニュートラル化の加速
派手さを抑えた「くすみパープル」は主張が強すぎないため、オフィスウェアやカジュアルシーンなどのファッション系だけでなく、工業デザインやウェブデザインなど、幅広い用途で持続的な需要が見込まれます。
新たなトーンの台頭
一方で2026年のトレンド予測では、「フレッシュパープル(AMARANTH PURPLE)」のような、レッドとブルーの要素を統合したエネルギッシュで現代的なトーンが注目されています。現実とデジタルが融合する新しい体験(フィジタル体験)を表現する上で、今後重要な色となるかもしれません。
パープルカラーを使う際の注意点:不向きなケースやデメリット
「パープルカラー(紫色)」は魅力的な色ですが、使用する際にはいくつかの注意点があります。
色の認識への配慮
紫色は、赤と青の中間色であるため、人によっては認識しづらいと感じる場合があります。特に高齢者や視覚に障がいを持つ方にとって、Webサイトなどでの可読性が低くなる可能性があるので注意が必要です。重要な情報やテキストの色には慎重な選択が求められます。
ミステリアスすぎる印象?
神秘的で高貴なイメージは魅力的ですが、使い方によっては「ミステリアスすぎる」「近寄りがたい」「怪しい」といった印象を与えてしまうこともあります。親しみやすさや明るさ、開放感を前面に出したいデザインには不向きな場合があります。
食欲を減退させる?:
紫色は、一般的に食欲を減退させる色と言われています。そのため、食品関連のパッケージデザインやレストランのWebサイトなど、食欲を刺激したいデザインでは避けた方が良い場合もあります。(色あいや使い方次第ですが…)
安っぽく見えてしまう?
トーンや彩度によっては、安っぽく見えてしまうリスクもあります。特に彩度の高い原色に近い紫は、使い方を誤るとチープな印象を与えかねません。上品さや高級感を出すためには、くすみのあるトーンや深みのあるトーンを選ぶ、他の色との組み合わせに工夫するなど、バランスが重要です。
まとめ
このように、パープルは単なる「流行の色」としてだけでなく、その多様なイメージから、様々なデザインに活用できる大きな可能性を秘めています。パープルに限らず、デザイン制作者は、色彩の持つ魅力を最大限に引き出しつつ、デメリットを考慮しながら、効果的な配色をすることが求められます。
皆さんの周りでも、パープルが使われているデザインを見かけたら、ぜひその意図や効果について考えてみて見ると面白いかもしれません。