横浜市都筑区は晴れの朝です。3月になり、春らしい温かい日が増えてきましたね。
先日、比較的近所の大倉山公園(横浜市港北区)で梅を見てきました。
ドラマのロケ地にもよく使われるこの公園ですが、46種約220本の立派な梅林もある梅見の名所でもあります。
当日は天候にも恵まれて、ほぼ満開の梅を楽しむことができました。
しかし3月になると太陽の光もかなり強力で… 結構日焼けしました(笑)。
もう紫外線対策が必要ですね。
紫外線といえばデザイン屋的に気になるのは、日照によるポスターや看板の色褪せ。
屋外で日の光に晒されるポスターや看板などは、紫外線などで色褪せを起こすことがあります。
日焼けし、色褪せてしまうとデザイン的にもツラいものがあるわけですが、今回はその話を書いてみたいと思います。
特に色褪せしやすい、赤系統の色。それはなぜ?
塗料やインクの色褪せは全ての色で起こりますが、特に色褪せしやすいのは赤系統の色。
屋外看板などで赤い文字が色褪せ(褪色)しているのを見かけたこと、ありますよね。
強調したかったはずの文字が薄くなって、逆に見えにくくなってしまいます。
下の写真のような感じで。
また、屋外でなくても平綴じ冊子の背表紙部分など、光が多く当たっていた部分が色が薄くなっていたりします。
太陽光線だけでなく、蛍光灯などでも日焼け・色褪せは起こるので要注意です。
先述のように他の色に比べて赤系統の色は色褪せしやすい傾向にあるのですが、それはなぜでしょう?
まずは色が見える仕組みの説明から始めたいと思います。
まずは前置き〜そもそも「色」って何?
太陽の光をプリズムを通すと虹色に分解(分光)できます(下の図参照)。
白く見える太陽光ですが、実はいろいろな色が混じっていることがわかります。
このように「色分け」ができるのは、太陽光に含まれる光の「波長の違い」でプリズム内での屈折率が変わるから。
この光の「波長の違い」が人間の目には「色の違い」として見えている、ということになります。
ちなみに上の図で両脇が黒いのは、
波長が長過ぎると(780nm以上)「赤外線」となり、
波長が短過ぎると(380nm以下)「紫外線」となって人間の目では見えなくなるからです。
(※「nm」は「ナノメートル」と読み、「1nm」は10億分の1メートル、つまり100万分の1ミリです)
「光の三原色」を混ぜるといろいろな「色」が表現できる
上に書いたように一見白く見える光にも実はいろいろな色の光が混じっているのですが、この色を混ぜ合わせるバランスを変えることで、さまざまな色彩を表現することができます。
特に赤・緑・青の3色(いわゆるRGBカラー)があればほとんどの色彩は表現が可能なので、これを「光の三原色」と呼びます。
下記のような図をご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか?
仮に、下の図のように暗い部屋の中で、白い壁を緑や青の光で照らしたとします。
緑(Green)と青(Blue)を掛け合わせれば水色(Cyan)になり、さらに赤(Red)を掛け合わせれば白になります。
実際には微妙な色味の誤差や光の強弱のバランスの違いなどもあり完全な白にするのは難しいのですが、原理的にはこのようになります。
絵の具やインクの混色(減法混色)とは異なるので混乱しそうですが、光の混色(加法混色)は絵の具とはかなり違っていて、混ぜると白っぽくなる傾向があります(←これ大事)。デザインの勉強をする人は(Webにしろグラフィックにしろ)かなり初歩の時点でこういったことを学びます。
今ご覧になっているパソコンやスマホの画面も赤・緑・青の3色の光のバランスを変えることで様々な色を表示しています。
下の画像はパソコンの画面を目一杯拡大撮影したものです。
赤・緑・青の画素がびっしり並んでいることがわかりますね。
赤いものが色褪せ・褪色して「赤く見えなくなる」理由
赤いものが赤く見えるのは「赤い光を多めに反射している」から。
逆に言うと「赤以外の光を吸収してしまい、あまり反射しないから」とも言えます。
ここで上の方で載せた分光図をもう一度載せてみます(太陽の光を虹色に分解したアレです)。
赤い光は波長が長く、緑→青→紫→紫外線になるにつれて波長が短くなります。
一般に波長の短い光はエネルギーが高く、そのような高エネルギーの光は印刷に使用するインクの顔料(色素)の分子の科学的結合も破損させたりもします。
特に紫外線の破壊力は顕著で、プラスチックも劣化させますし、殺菌やウイルス不活化の作用もあるので新型コロナの対策商品として深紫外線(UV-C)を使用した除菌装置も色々登場しました。
一般的には赤の色素はもともと化学的な結合が弱い上に、青〜紫〜紫外線といった高エネルギーの光を多く受け止めてしまう(だから赤く見えるのですが)ので、さらに壊れやすいという面があります。
結果、光に当たり続けると他の色より早く色素の化学的な結合が壊れてしまい、次第に「赤以外の光」を吸収できにくくなります。すると「赤以外の光」も、より多く反射するようになり、先述の混色効果により白っぽく見えてきます。
これが「色褪せ・褪色」の理由です。
看板にしてもポスターにしても、色味が変わってしまうとデザインの印象が大きく異なってしまう場合もあり、可能であればそのような日焼けや色褪せは抑えたいところ。
具体的な褪色の防止策としては大きく3つの手法があります。
カタログやパンフレット、店舗のメニューなど比較的長期に渡り見られることが想定される広告物・印刷物にも有効な手法です。
デザインを守る、印刷物や看板の色あせ防止3つの方法
【対策その1】UVカット加工する
印刷会社によっては「UVラミネート加工」や「UVニス加工」というオプションが用意されている場合があります(名称は印刷会社により多少異なる場合があります)。
紫外線を通しにくいフィルムを貼ったり、コーティングを施す加工です。
フィルムやコーティングによって撥水性や耐久性が上がり、見た目も良くなるのでカタログや冊子の表紙などによく使われます。
長期間貼っておくポスター類にもおすすめ。無加工より色褪せや劣化を遅らせることができます。
屋外看板なども「UVラミネート加工」を施すと、紫外線をある程度遮断してくれるので色褪せしにくくなります。(色褪せを完全に防止できるわけではないようです)
「UVカットカバーフィルム」なるものも市販されているようです。店頭POPなどで使うには良いかもしれませんが「貼るのが難しい」という意見もあるようです。大手ネット通販などで入手できるようなので、利用するかどうかについては商品情報や口コミ情報を参考にご判断されるのが宜しいかと思います。
【対策その2】耐光性インク(インキ)で印刷する
色素を紫外線に強いものを使用した「耐光性インク(インキ)」というものもあります。
多少印刷コストは上がりますが、デザイン制作物の色褪せをある程度抑えられます。
また屋外の場合、太陽の熱や雨などの水分の影響もありますので、そちらの影響も考慮した「耐候性インク」なるものもあります。
「耐光性」と「耐候性」の違いが紛らわしいですが、実際には印刷会社や看板施工会社と相談して決めることになるかと思います。インクジェットプリンタのインクも耐光性を高めたものが市販されていますね。
【対策その3】印刷用紙を変更する
インクだけでなく、印刷用紙も日焼けします。古い本など紙自体が茶色っぽくなってくるアレです。
印刷用紙も種類により日焼けしやすさが異なりますが「合成紙」と呼ばれる合成樹脂などから作られる用紙は、一般に強度や耐水性もあり、日焼けにも比較的強いという特徴があります。(※合成紙も種類により性質が異なります)
長期間使いたいパンフレットやポスターなど、用途とご予算によっては「合成紙」の使用もご検討されても良いかもしれないですね。