今年、2020年の夏はいろいろと「我慢の夏」となっておりますが、そんな重苦しい空気も忘れさせてくれる(かもしれない)ド派手な色やゴージャスな金属色も印刷できてしまう広告印刷物での「特色カラー」印刷について書いてみます。
通常のカラー印刷は4種類のインクを使う「4色印刷」ですが…
チラシやパンフレット、カタログなどのカラー印刷は通常「4色印刷」と呼びます。
「CMYK」の4色でおおよその色彩を表現できるので。
写真も4色の掛け合わせで印刷できます。
ちなみに「CMYK」とは
シアン(Cyan) / マゼンタ(Magenta) / イエロー(Yellow) / ブラック(Black)
の4色です。
インクジェットプリンタなどでも比較的安い機種はインクカートリッジが4色のものが多いのですが、高画質を謳ったものには6色や8色のものも結構あります。インクの数が増えるのは、よりキレイに、色鮮やかに、あるいは正確な色でプリントアウトするためですが、「なんで印刷工場で印刷するカラー印刷は4色しかないの?」と思われるかもしれません。
印刷工場にある印刷機の方がそもそもお値段も全然高くて高性能ですし、いろいろと緻密に管理しているので4色でも結構正確な色が出ます。と言っても色再現の精度は印刷会社によってばらつきがあるのが実情ですが。。。
「4色印刷」についてさらに詳しく知りたいという方は下記(過去記事)も併せてご覧ください。
通常の印刷では表現不可の「蛍光色」を「特色」として追加
しかしどんなに高性能でも緻密に管理していても、再現できない色というのはあります。
例えば「蛍光色」。
皆さんご存知の蛍光ペンなどで使われる目立つ色ですが、これは通常の印刷では出せません。
「蛍光色」とは言い換えれば「高彩度色」、つまり彩度(鮮やかさ)が極めて高い色なのですが、「彩度の表現」には物理的限界があります。
特に印刷物の色表現はインクを混ぜ合わせる「減法混色(げんぽうこんしょく)」で行いますので元の4種類のインクの持っている彩度より高い彩度は出せません。(ちなみに今ご覧になっているパソコンやスマホの画面は光そのものを混ぜて色を表現する「加法混色(かほうこんしょく)」と呼ばれます。)
例えば子供の頃、水彩画を描くときに絵の具をいろいろ混ぜていくとどんどん濁った、鮮やかでない色になってしまった経験のある方も多いと思います。「減法混色」で狙った色を合成しようとしても、彩度は下がることはあっても上がることはないのですね。残念ながら。
従いまして、通常の印刷用インク(プロセスカラー)よりも鮮やかな色を印刷物で使いたいときは専用の印刷用インクを追加する必要があります。例えば広告表現としてデザイナーが蛍光色を使いたいとなった場合、蛍光色のカラーを追加して印刷する場合があり、これを「特色」と呼びます。
このように、通常の印刷プラス「特色」1色なら「5色印刷」になります。
例えばこんな感じ。通常の4色(CMYK)に「特色」1色(この場合は蛍光ピンク色)を追加したイメージです。
上の図であれば色相的に近いM(マゼンタ)版を蛍光ピンク色に置き換えても良いのですが、カラー写真などの4色掛け合わせ部分は正確な色ではなくなります。そのため写真部分は通常の4色印刷で、見出し文字の部分に蛍光色を使う、という場合が多いようです。
ウェブの場合は印刷物より多少彩度の高い色が出せることが多いので蛍光色っぽい色も少し使える場合があります。ただし閲覧するパソコンのモニタによっては表現できる彩度が高くない場合もありますので、ホームページなどでは「蛍光色ありき」のデザインは困難かと。
ブラウザを変えると色の感じが変わることもあります。Firefoxは色再現がハデですね。。。
デザイン屋的にはもうちょっと抑えて欲しいところですが、、、その話はまた別の機会に。
広告に「特色印刷」を使うかどうかの判断をどうするか?
蛍光色は上手く使えば強い印象を持たせることができますが、色が「強い」だけにデザイン的に「外した」時は悲惨なことになりかねないので使うときは慎重にするのがおすすめです。
またコストのことも考慮する必要があります。
モノの価格というのは大抵「数が出るものは安くなる(いわゆる量産効果)」ということがあるので一般的な「4色印刷」に比べると特色印刷は少数派ですので、それなりにコストがかかります。
広告に特色印刷を使うことでチラシやパンフレットなどがより目立ち、集客効果、宣伝効果が伸びてコスト増加分をペイできれば良いのですが、その効果が見込めるかどうかは広告戦略として考えておく必要があります。広告主様の立場からすれば、広告代理店や制作会社がその必然性をちゃんと説明してくれるか、説明内容に納得できるか、で判断して頂くことになります。
なお、特色は蛍光色のような特殊な色だけではなく、会社のロゴ(コーポレートカラー)を正確に出したいときにも使われます。いわゆる「CI(corporate identity)」戦略の一環ですね。また後述する美術書など、厳密な色彩表現が求められるような印刷物でも使われます。
メタリックカラーは1色追加でも「2色」としてカウントします
他にもメタリックカラー(金属色)も通常のCMYKでは出せませんので「特色」で印刷します。いわゆる「箔押し」とは違うのですが、見た目の印象は近いかもしれません。商品のパッケージデザインなどでよく見かけるアレです。
通常、メタリックカラーは同じ色を2回印刷する必要があるのでメタリックカラーを1色追加すると、印刷色のカウントは「2色」増えます。
なので「6色印刷」になります。
先に少し触れたように、美術書など色彩表現がシビアなときはカラープリンター同様にインクの数を増やしてより高度な印刷とすることがあります。そういう場合は5色や6色にとどまらず8色印刷という場合もあります。当然コストがかかります。美術関係の本が何万円もしたりするものがあるのはそのような理由もあるのですね。