今のWebデザインは「フラットデザイン」が大流行り。その理由とは?
ウェブのデザインをしている人には当然ご存知の「フラットデザイン」。デザイン業界の方でなくても、最近のホームページは立体感を排した、フラットな表現が増えていることをご存知の方は多いと思います。
ほんの数年前までは文字に陰影や影をつけて立体的にしたり、浮かび上がっているようにしたりするデザインが「Web 2.0」とか「リッチデザイン」などと呼ばれて持て囃されていたのですが、今ではそんな呼び名を耳にすることもほぼなくなりました。Webの世界の流行り廃りの速度はやたら早いのですが、近頃のWebデザインの世界は「フラットデザイン」が大流行りの状態です。
そもそも「フラットデザイン」が始まった理由というか目的としては、「スマホ対応」、つまり「マルチデバイスへの対応」ということがあります。
つまりウェブサイトがパソコンだけのものではなくなり、画面の小さなタブレットやスマートフォンでも見るのが当たり前になったことにより、画面サイズに合わせて柔軟に表示を変化させられるように装飾をシンプルにしよう、ということで。
Googleが明朝体(英語書体なので本当は「セリフ系書体」と呼ぶべきですが)の立体的なロゴを止めて、ゴシック体(サンセリフ系書体)のフラットなものに変更したのは、Webデザインの象徴的な出来事だった、と思います。
iPhoneの画面表示もすっかりフラットになって久しいですね。
擬似的な立体感や、素材感も表現する「スキューモーフィックデザイン」
そんなわけでインターネットではすっかり主流となったフラットデザインですが、印刷物のデザインもその影響か、フラットデザイン的なデザインのほうが洗練された印象に見える場合が増えてきていると思います。
10数年前、私がまだ雇われデザイナーをやっていた頃(当時はDTP、つまりパソコンを使った印刷物のデザインが普及して間もない頃だったのですが)上司や先輩デザイナーの皆さんから「立体的にしろ」という指示をよく受けました。
陰影や影をつけて立体的に見せるのはひと手間〜ふた手間かかるのですが、クライアント様に対しても「手間かけてデザインしました!」とアピールしやすいという営業的な事情もあったようです。
デザイン業界標準とも言える、画像加工ソフトの「アドビ・フォトショップ」の各種機能を使用して、擬似的な立体感を出したり、革や木の画像を貼り付けて素材感や質感も表現したり、そういうデザインを「スキューモーフィックデザイン(Skeuomorphic Design)」などど呼びますが、当時はその「スキューモーフィックデザイン」がグラフィックデザインでも先進的な印象だったのですね。
立体的な質感表現を使ったデザイン形式は、もう古い?
が、しかし。
今や立体的な質感表現を使ったスキューモーフィックの手法は「古い」印象になってしまうことが増えてきていると思います。
以前より立体効果が作りやすくなったことと、制作するデザイナーのスキルの差が出やすいスキューモーフィックデザインは当たり外れが激しく、ともすると安っぽい印象になってしまうこともあります。
デザイン用ソフトの使い方を覚えただけでデザインの訓練をあまり受けていない「オペレーター」クラスの制作者による、あまりクオリティが良いと言えない立体的デザインがかなり世に出てしまったこともスキューモーフィックデザインのイメージダウンを加速させてしまった感はあります。
そういった「デザイナーのスキルの差」を出にくくできることも「フラットデザイン」誕生の要因の一つでもあるわけですが。コンピュータという新しいデザインツールの可能性にみんなが引きずられすぎたことの反動が、今のフラットデザイン大流行のベースにあるような気もします。
「スキューモーフィックデザイン」も選択肢に入れて全然OKなはず
では何でもかんでもフラットデザインにすれば良いのか?というとそういうわけではなく、やはりデザインは「適材適所」だと思います。IT系なら今はフラットデザインにしない理由が見当たらないような状況ですが、食品関係の広告で「温かい、健康的なイメージ」を出したい場合は素材感を強調した「スキューモーフィックデザイン」も選択肢に入れて全然OK…なはず。
そもそも世の中の人すべてがパソコンの世界に慣れ親しんでいるわけではないですし。
日常生活で慣れ親しんでいる質感をデザインに活用することは(うまく使えば)直感的な理解を助けてくれます。
ウェブデザインでもフラットデザインの問題として、クリッカブルな(クリックできる)場所が分かりにくい、ということがありますが、スキューモーフィックデザインなら立体感を付けてボタンらしくして、いかにも「ここはボタンですよ」という表現ができるわけで、最近Web制作で重視される「ユーザビリティ」の向上にも繋がります。
売れる広告作りのために制作者が心がけるべきは、「流行っているから」というだけの理由で特定の表現手法に固執するのではなくて、(流行に乗ることは大事ですけれども)伝えたいことをより確実に伝えられるデザインを常に選択し続けることだと思います。